国税の組織とそのこぼれ話(5)

最近の傾向について
今日は、国税の組織における最近の傾向についてお話しします。それは、女性職員の増大と若年化です。

特に、この10年間は、国内景気の低迷に伴う民間企業への就職難を反映して、国税の分野でも受験者を希望する女性が増え、採用される女性職員の数も急増しています。

私が在職した昭和51年から60年代初期では全体の10%程度でしたが、現在では20%から25%に増えていると思います。しかも、以前は、総務、管理徴収といった非調査部門が中心だったものから、個人課税(所得税部門)、法人課税部門等の調査部門にも配属されてきています。しかも25歳から35歳くらいの若い職員です。

また、男性職員も若手中心に切り替わってきており、経験豊富で怖い存在だったベテラン職員は非常に少なくなっています。

一番目の若い女性職員の増加という点については、調査において次のような特徴が見られます。その前に、彼女たちの一般的特徴を指摘しておきますと、性格は非常に真面目だが、柔軟性に欠ける点があります。また、理論的な税務、会計の知識は優秀ですが、実務特に調査経験がないために、人との折衝事とか議論をしながら妥当な結論を見つけ出すということは苦手です。

さて、実務での特徴ですが、それは、非常に細かいということです。例えば、経費の否認項目については、100円程度のものでも否認するということがあります。また、源泉税の漏れについても軽微な点を指摘する傾向があります。税務調査においては必要なことですが、あまり枝葉抹消のことばかり指摘していますと、納税者の方とトラブルを起こします。もちろん問題がありそうだから調査対象に上がってきたわけで、また、納税者の方も受認義務がありますので、ある程度のやり取りは仕方がないのですが、それも程度問題だということがあります。また、調査の結論は、納税者の方との話し合いの結果、妥当な方向で出さなくてはいけないのですが、自らの主張をするだけで終わっているケースが多く見られます。統括官がいちいち出向いて結論を出すということも珍しくないようです。

次に、職員全体の若年化ですが、全体としての調査能力という点では、落ちていると思います。そこには、ベテラン職員のノウハウを引き継ぐ場(昔は、よく5時過ぎには、駅近くの居酒屋で酒を酌み交わしながら、実際の調査の話をしてもらったりしたものです)を今の若手職員は、自分の用事があるとしてなおざりにしていることが挙げられると思います。

彼らの調査も、経験に裏打ちされた本当の意味での実践に根ざしたものではないことから、また上司にうまく現状を伝えられないことから、かなり「トンチンカン」な、また当局の一方的な押しつけが出てくるケースもあります。この辺りの熟慮が実は大変重要なのです。

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