税務調査とそのこぼれ話(4)

今日は、現況調査についてお話しします。現況調査とは、国税局・税務署の職員が調査先に最初に訪問し、現場の状況を調査することを指します。調査の際、通常は、顧問税理士及び調査先に事前に調査を行う旨と調査希望日を連絡してきますが、仮装・隠ぺいの恐れ(いわゆる脱税の疑いが強い場合)があるときは、突然数人〜数十人で踏み込んでくることがあります。

これが、最も強烈に出るのが強制調査である査察です。最近も「野村紗知代事件」を初め多くの脱税事件が世間を賑わせていますが、いずれもこの「事前通知なし」の現況調査によって、不正の全貌が明らかになっています。査察以外は任意調査になりますが、それでも事前通知なしに現況調査を受けた時は、相当のプレッシャーを受ける(かなりまずいものが出てくる)状況です。

では、現況調査とはどういうことをするのかといいますと、強制調査である査察(裁判所の令状があるので調査先はほとんど抵抗できません。)を除くケースでは、まず現金、預金(家族名義を含む)、株券などの有価証券、不動産の売買契約書、貸金庫の中身、印鑑(不正な預金等にこれらを使う恐れがあるためです)等、重要な資産の現物を社内の責任者立会いの上で確認していきます。これらは事務所、自宅、工場等全てが対象となり、また、場合によっては個人の手帳等私物に及ぶこともあります。その後、これらの発生時期や解約時期、金額、内容等をそれぞれ確認するというやり方をします。つまり、社内にある事業関連と思えるものは全て対象にするということです。

昔、現役の頃、ある新聞屋さんを調査しました。新聞屋さんは折込広告代でかなりの利益を上げていましたが、現況調査で事務所の隠し金庫から、簿外不動産の取得、簿外株式の取得、多数の印鑑(後日、仮名預金の名義に使われていたことが判明しました)等が出てきました。弟が元ペンキ職人で腕が良かったものですから、20以上の駅の看板の広告の仕事をしていたのですが、この収入を全額除外し、その売上金を仮名預金として積み立てていたものでした。この場合は、現況調査を掛け事務所内の資産類を関係書類も含めて全て開示させたことがキーポイントでした。

また、最近の国税局の資料調査課のケースですと、6ヶ月前位から内定調査(事前に調査先の事務所、金融機関、取引先、個人的関係を内密に調べること)を実施し、当日は30人〜50人で、自宅、事務所、工場、金融機関、証券会社、などに同時に調査に入っています。そこでは、現金預金、有価証券、貴金属、不動産書類、取引書類を多人数で一気に解明するというやり方が普通です。映画か何かのように思われる方もおありかと思いますが、取引の国際化、専門化、ネット化等当局にとっても理解しがたい状況が急速に進行していることから、現況調査の重要性と頻度は今後益々増加すると思います。

この対策ですが、現況調査に入った時はもう遅いと考え、逆に言えばそれまでに問題点は全て整理・整頓しておくという態度が、最も有効な対応策ではないかと考えます。


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