税務調査とそのこぼれ話(5)

今日は、税務調査における隠し資産の把握方法についてお話します。

まず、前回お話した「現況調査」により、隠し資産の発見の端緒(きっかけという意味)をつかむのが最短の方法です。具体的には、簿外預金を預金している銀行のマッチ(今はあまり配られないのかもしれませんが)ポスター、その銀行担当者からの電話等で、隠し資産の保管機関を見つけることが重要視されます。

例えば、調査時に簿外取引銀行のマッチが見つかれば、その銀行に取引がある可能性が高いわけです。また、その銀行担当者からの電話等が入れば、同様に取引がある可能性があるのです。

その点が見つかれば、納税者の方に状況を聞くことと銀行調査を実施することで、簿外預金の把握は比較的容易です。

また、「現況調査」では何も見つからなくとも、元帳と預金帳との突合せ、預金間取引を精査することにより、簿外資産が見つかることもよくあります。

例えば、実際にあったことですが、普通預金から3,000円位の現金出金がありました。普段は小額の取引ですのであまり気にも留めずに見過ごしてしまうのですが、端数の金額だったので気になり調べてみました。そうすると、簿外定期預金があり、これを担保に借入をしていたのですが、その受取利息と支払利息との差額を、間違えて本名の預金から差し引いてしまっていたのです。この場合、簿外定期預金はそのまま課税ですし、借入金もその借りたお金が簿外の資産(不動産の購入資金)の一部に回っていたため、これらも課税になりました。

このように、多額の預金を持つようになると、本人口座(本名勘定と言います)と仮名口座の区別が本人はもとより、銀行の担当者も混同するケースが多々あります。また、急に資金が必要になるケース(資産の購入、関係者の死亡または破産)には、その傾向が強いようです。

更に、このような資金が必要となる情報は、ご本人との会話において得ることが可能です。私は、調査時の最初の1時間はできるだけ幅広く事業以外のことも含めて聞くようにしていました。そのことにより、この人は何にお金を使いたがっているかを知ることができるからです。例えばゴルフが好きな方だとしますと、会員権はもっているのか、主に誰とどこでプレイするのか、家族で行くのか、等を聞いておきます。そうしますと、本人の会員権は表の預金から出しているが、家族のは裏からというケースの際に、預金取引の精査や会員権業者への反面によって解明できるのです。

また、家の新築、家族の結婚、死亡、進学等の事実を聞くことも重要です。このような多額の出金がある時は、本名の預金だけでなく裏の預金も取り崩されていることが多く見られるからです。


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