税務調査とそのこぼれ話(6)

今日は、反面調査についてお話します。

まず、反面調査の意味ですが、調査先の取引内容に疑点がある場合に行う第三者への問合せのことを言います。

具体的な例で説明しますと、A社からB社に外注費が支出されていました。その取引内容は、現金決済でしかも単発取引、金額も100万円ぴったりで遠隔地取引。このようなケースでは、調査官が直接B社を訪問し、B社の取引担当から話を聞いたり関係帳簿を見せてもらったりします。B社がA社の子会社等であればあまり効果はありませんが、B社が第三者の会社であれば「そんな取引はやっていない」とかの反応があることがあります。このようなケースは、典型的な架空取引のケースです。今の場合A社は、遠隔地で頻繁に取引していないB社に目をつけ、やってもいない取引をでっち上げ、足のつかない現金取引に見せかけて経費処理をしようと画策したのです。

このような単純なケースはほとんどありませんが、取引後A社とB社が不仲になっているような場合には、B社が全てを告白してくれることがあります。

それ以外は、A社とB社の間で事前に合意ができていて、一応の書類も整っていることが多く、その解明には時間がかかります。ただ、B社への反面調査は、B社自身への調査でありA社の同意が無ければできないものではありませんので、B社への追及で解明する方法を採ります。

最近の調査事例では、A社からB社、B社からC社、C社から・・・E社と次々に5社もの取引先に金を流し、5社目のE社からA社に裏資金を還流させていたケースがありました。したがって、当局は4社に対して次々に反面調査を実施し、その金の流れをチェックするとともに経営者を追及することによってその全貌を解明したケースがありました。

A社は製造業の会社でしたが、政治献金や簿外預金のプールのために、工場建築の際の建築会社を利用して水増し発注し、孫請けのE社からキックバックさせたのです。

このような取引者同士で合意の上で取引をでっち上げることを「共謀」といいますが、このようなケースは「仮想・隠蔽」と認定され、重加算税(35%)の対象となります。

また、退職した元従業員を利用し、退職後も在職していて給与を払っていたことにするケースがあります。この場合も「架空人件費」に該当し、同様に重加算税(35%)の対象となります。

最近の傾向としては、リストラにより解雇された元職員が労働基準局に訴えたことからそのような不正経理が発覚したケースとか、同様に解雇された元職員が経営者の行った不正経理の内部資料を入手し、インターネットを利用して外部に配信したことが調査に発展するケースも出ています。

その時は友好な関係でも、その後はどうなるか分からないわけで、そういう点からも反面調査で思わぬことが解明されるケースはとても多いのです。


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