税務調査とそのこぼれ話(7)

今日は、「資料せん」についてお話します。

「資料せん」とは、売上や仕入、経費などの取引状況に関する資料、あるいは資産取得や資産売却等の資産移動に関する資料、このような商取引をしているといった風評の資料等を、特定の調査先に関して集めたものを言います。

税務当局には、あらゆる所からあらゆる資料が集まってきます。資料の入手先別で分類しますと、各企業から提出を義務づける「法定調書」と、税務職員が独自に集める「内部資料せん」があります。また、重要度に応じて「重要資料せん」とそれ以外の「一般資料せん」(その中でも重要度のランクは様々)に分かれます。

前者では、税務職員が独自に集めた「内部資料せん」の重要度が高く、後者では、言うまでもなく「重要資料せん」が重要視されます。

では、なぜこのような「資料せん」が重要視されるのでしょうか。それは、ここ数週間日本中を熱狂させているワールドカップになぞらえて言えば、キラーパス的な存在だからです。

例えば、最も重要度の高い「重要資料せん」にはどのようなことが記載されているかといいますと、「A社のB銀行のC支店の仮名口座〇〇に、〇月×日××社から100万円を振り込んでいる。」といった感じです。このように項目が売上に計上されていなければ、即脱税となり重加算税は免れないでしょう。

そこまでいかなくても、取引に関する資料せんで売上除外が見つかることはよくあります。大多数は、単発取引(一回だけという意味)、現金決済、遠隔地取引(例えば、東京の業者が沖縄で仕入をした場合)のケースです。皆さんも、想像してみてください。あなたが仮に脱税者と仮定して、どのような場合に売上を抜いて当局をごまかそうとしますか。普段頻繁に取引をしていて、小切手決済で、隣の区の業者の取引を除外するでしょうか。そんなことをすれば、前回お話した「反面調査」でたちまちばれてしまいます。つまり、単発取引、現金決済、遠隔地取引が一番安全だと彼らは思うのです。ただそれは、当局も容易に想像が付くところです。したがって、このような取引はマークがきつくなります。

皆さんが確定申告に医者の領収書を添付していますね。あれは、医者にとっては売上なのです。当然有効な資料せんになるわけです。

また、土地、建物、車、船等の資産を取得した場合も、法務局の登記の変更で取得の事実が把握できます。したがって、その資金出所(贈与はないか。隠し預金からの出金ではないか。)を確認することになります。資産の売却も重要ですが、資産の取得の方が重要です。何故なら、隠れていた資金が出てくるので不正を暴きやすくなるからです。

それと最近増えているのが投書(いわゆる「たれこみ」)です。特にインターネットから国税庁へのメール、従業員の解雇を巡るトラブルからの国税局への投書が増えています。

週刊誌のスキャンダル記事も情報源となります。

やってはいけませんが、もしやるとするとどうなるか。その時当局はどうするかと柔軟に発想するのは、皆さんのお仕事においても重要なスキルかと思います。


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