税務調査とそのこぼれ話(8)

今日は、「推計計算」(P/L面)についてお話します。@

法人税、所得税は「利益」に課税する税金です。ではこの「利益」を国税マンはどのようにして計算し、当初の申告額に比べて「おかしい」と判断するのでしょうか。

それは、まず売上高の推定です。例えば、ある「お蕎麦屋さん」があるとします。店の広さは20坪、従業員は5名、席数は30席、代表的な商品の価格が800円とします。皆さんは、その店の年間売上額がどの程度か推測できるでしょうか。

私の場合はこのようにします。立地、昼夜の客状況にもよりますが、

1. 昼間の一日あたりの売上高・・
   営業時間1時間として
30席×4回転(1時間に何人の人が入れ替わるか)×1時間×800円(本来は伝票をめくって平均単価を計算すべきです。)=96,000円

2. 夜の一日あたりの売上高・・営業時間5時間として
    30席×2回転×5時間×1,200円(夜は酒とか単価が張るケースが多い)=360,000円

3. トータルの売上額は@+A=456,000円となります。

4. これを年間売り上げにするためには300日を掛けます。したがって、45   6,000円×300日=136,800,000円が推定年間売上額とな   るわけです。

5.これで売上額は分かりましたので、利益を計算します。まず、経費は大きく製  造原価と販売費及び一般管理費に分かれます。更に、後者はどのお店でも発生  する一般経費と、人件費や地代家賃あるいは借入金利子のような特別経費に分  かれます。(一般経費と特別経費の区分は税務独特かも分かりません。

お蕎麦屋さんのケースですと、製造原価率は30%程度ですので売上総利益率は70%、したがって売上総利益額は136,800千円×70%=96,760千円となります。

一般経費はあっても15%くらいです。したがって136,800千円×15%=20,520千円です。問題は特別経費ですが、今仮に、人件費と地代家賃だけだとしますと、人件費は5,000千円×5人=25,000千円、地代家賃は20千円/坪×20坪×12月=4,800千円となります。

したがって、当期利益は96,760−20,520−25,000−4,800=46,440千円と推計します。

このケースは、店を見るだけで判断する方法ですが、ある程度の判断材料にはなります。

実際に仕入金額が把握できるようですと、もう少し正確な推定が可能となります。

一般の製造原価率(小売業では売上原価率)は、クラブ等で10%、喫茶店で20%、飲食業(うどん、そば、中華)で30%、小売業で70〜80%、卸売業で90%と言われています。皆さんも1度興味のあるお店の推計計算をしてみてはいかがでしょうか


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