国税の組織とそのこぼれ話【業種編】(2)

今回は、「飲食業」です。

代表選手として「うどん屋さん」を取り上げてみましょう。

最近「さぬきうどん」のブームで各お店は大変繁盛しているようです。後2〜3年後には多分たくさんの税務調査が入ることでしょう。と言いますのも、税務調査はほぼ過去3年分の所得(利益)を調査するからです。開業後間もない企業の場合は課税できる期間が短いため、税務署全体から言いますとあまり効率的ではないからです。

それはさておき、実際の調査から言いますと、まず現金の監査、預金通帳の確認、その他現金等価物(国債、社債、株式、不動産の権利書、ゴルフ会員権証書、貴金属)の確認から入ります。これらの業種は、いわゆる現金商売と言われ日々現金で決済される訳ですから、極めて脱漏(計上漏れ、もっとはっきり言いますと脱税)が起こりやすいからです。

ですから確認には、会社や自宅はもとより銀行の貸金庫、証券会社、銀行、取引先も当然含まれます。

これらはきちんと管理されているとします。次にチェックするのは、レジペーパー、売上伝票です。集計誤り、金額の改ざん、伝票自身の破棄をチェックします。昨日のゴミ箱を広げて伝票が破棄さていないかも検査しますし、事務所内でのメモ等もチェックします。売り掛けがあれば出前の記録簿をチェックし、必要に応じて相手先に確認します。

次に行うのは仕入れ関係です。特に小麦粉等の主要仕入れ商品です。具体的には次のようにやります。

今うどん玉を製造しているケースを想定しますと、うどん玉一個製造のために何グラムのうどん粉が必要か計算します。それが分かれば、一年間に仕入れた小麦粉のキロ数から何個のうどん玉が製造できるかを把握できます。一方、ある月の売上の中で何個のうどん玉が含まれているか計算します。先程の一年間に製造できるうどん玉数に、このうどん玉対売上割合を掛ければ年間の推定売上高を計算できます。

このような計算は数量計算と言われ、売上脱漏の補助資料となりますが、もっと大きな機能があります。それは、その企業の全体像を浮かび上がらせますという点です。

つまり、各お店では売上は売上伝票から、仕入れは仕入れ伝票から、経費は領収書からというケースか圧倒的です。その正しさは個々にしか保証されていません。それを数量計算は横につなぎ個々のデータの関係を一元的にチェックできます。

今このような数量計算で一年間の推定売上が1億円で、申告が5,000万円であったとします。極端に言いますと、我々はこの5,000万円の行方を追うのです。それは簿外預金になっているかもしれませんし、簿外の不動産、金の延べ棒になっているかもしれません。

数量計算は、箸の仕入れ数量から計算するケースもありますし、おしぼりの数から行うこともあります。


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