国税の組織とそのこぼれ話【業種編】(8)

今回は、「不動産仲介業」です。

バブル時には最も儲かった業種ですが、現在は地価の下落によりあまり注目されない業種になっています。ただ、城南地区等人気のある地域での一戸建て、駅近隣立地のマンション等は依然人気があり、また売買単価が他の業種よりも圧倒的に高いため、このような物件を仕入れできる業者は比較的好況のようです。

では、このようなケースはどのように調査するのでしょうか。

まず、業者のタイプですが、自己資金で土地を仕入し、その土地に建物を建て客に転売する業者もいれば、単に紹介をして手数料だけもらう業者もいます。前者は、土地という不動産を一端取得するので比較的後を追っていくのは楽ですが、今は後者が増えていると思います。いずれにしても物件の仕入状況を把握する必要があります。仲介契約書、売買契約書、領収書等でどの物件をどのように仲介したか、その手数料はいくらだったかを確認していきます。よくあるのはある物件を紹介して手数料をもらった後、その下取り物件も紹介したがそれを抜くケースです。また、その人に気に入られ他の物件の紹介もあったがそれも抜いていくことがよくあります。特に相手がいずれ(売り方、買い方)も個人で、現金で決済するケースでは、契約書、領収書を破棄し、売上に計上しないことが多々あります。

また、一人の業者で全て完了するケースは希で、また手数料を抜くケースも仲間と組んでやる事がほとんどなので、取引が頻発している業者はマークする必要があります。赤字の会社を取り込んでそこで手数料を計上し、裏金で戻させている手口もよくある手です。

いずれにしても、例えば1億円の物件を仲介すれば306万円プラス消費税(3%プラス6万円)の手数料が入るわけで、一件抜くだけでも大きいわけです。

いずれも海千山千の強者ですから、なかなか実態を把握しその不正を見抜くには経験と観察眼、後相当の忍耐が必要です。

利益が出れば、それを使いたくなるのが人情で、不動産、貴金属、ゴルフ会員権、高級外車、遊興、競馬等のギャンブル、海外旅行、愛人等今までのこぼれ話でもご紹介した散財のオンパレードが出てきます。この点を狙うのがある面では効率的な調査方法です。申告が1000万円で、このようなお金をこの何倍も使っていればおかしいですよねという話です。

商品として取得した土地に自宅を建てたケースは、自家消費として時価で売上に計上しなくてはいけません。また経費としては、接待交際費に自家消費(家族だけで飲みに行ったりしたケース)が混入したり、車を事業に使っていることにしているのに実は奥さんが個人的に使っている事があります。

取引金額が大きいので気分が大きくなって、利益をつい無駄なものに使ってしまうことが多いようです。その後に調査があり大きな税の追徴が行われます。その一部でも残していれば、ここまで苦労しなくて良いのにということが国税マンの時も現在の税理士としてよく感じることです。


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