国税の組織とそのこぼれ話【業種編】(9)

今回は、「パチンコ業」です。

パチンコ業は、最も大衆的な娯楽業ということでかなり長期にわたって好況でした。ただこの10年以上にわたる日本経済の低迷で、上手く利益を出していく業者と廃れる業者に二極化してきています。

と言っても、他の業種に比べて仕入がいるわけでもなく、現金商売で、立地条件さえ良ければかなりの利益が見込めます。そこで税務署も重点的に調査を行ってきました。

では、このような「パチンコ業」の場合どのような調査を行うのでしょうか。

まず、この業種の利益源泉は出玉率と景品交換ですから、この辺りの数字をチェックできる方法を取ります。ここで出玉率とは、一日の出玉(客が獲得した玉)を入玉(客が購入した玉)で割った率のことです。この比率が100%としますと、客は表面上は損をしなかったことになります。しかし、一個当たりの金額が買う単価と売る単価(景品に交換するレート)では違います。つまり例え100%の出玉率(実際は80〜90位でしょう)でもここで儲かるわけです。次ぎに景品も例えば1000円分のお菓子を選んだとして、その仕入値段は50〜70%位で仕入れているわけですから、ここでも相当の利益が上がります。

つまり、出玉率を正確に把握できるようコンピュータのアウトプット資料で確認します。この業界では全ての業務をコンピュータ化しており、簡単にアウトプットできますが、プログラム自体に細工をしているケースとか、過去の資料を破棄するケースもあり簡単ではありません。次ぎに景品に関しては受払簿をチェックするとか、仕入の除外がないか仕入先に反面したりします。

次ぎに従業員も雇用期間が短いケースが多いため、実在性も含めて人件費の妥当性を追います。従業員の名前で給与として振り込み、実際は経営者が使っていたとか、その名前で借名預金をしていたケースは山ほどあります。

これまでは一般的なP/L面の検討ですが、むしろ重点的に行われるのは預金、株式、債券等の資産面の調査です。この業種に対しては、内定調査を前提にした、事前通知なしの現況調査を自宅と事業所で同時に行うケースが多く、その目的も売上等を除外し預金等で積み上げているものを一気に把握するために行います。

これらの最も厳いケースが査察ですが、査察までいかないケースも多額の脱税と、状況が把握しずらいケースには組調査で一気に現況ということが増えています。

その結果、簿外の預金等が見つかるケースが多く、また更にその資金で個人的に家、別荘、高級外車を買ったり、海外に何回も旅行しブランド品、高級時計をまとめて買ったりしていたケースも多く見られます。

もっとお金を使わなければいけない事は、設備更新や従業員福祉等いっぱいあるように見受けられますが、何故そのような結果になるのか私には不思議です。


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