国税の組織とそのこぼれ話【業種編】(4)

今回は、「弁護士業」です。

現在、世の中は大変な不況です。個人は賃金カット、リストラ等による個人破産が急増し、会社も債務不履行、破産、詐欺等による訴訟事件の他、会社合併、会社の一部分離等の企業法務分野も拡大していることから、弁護士さんの仕事は盛況と思えます。

このような法律の専門家である弁護士さんの調査はどのように行われるのでしょうか。

実際、かなり大変ですが、申告の根拠となった売上の内容以外に申告漏れはないか。また、経費の中に家事関連費(個人的な経費)が混入していないかがポイントとなります。

前者の売上関係では、「預り金」と処理されているが実際は売上とみなされるもの検証、相談事例の漏れ、顧問報酬の漏れ、各種講演、原稿料等の漏れを丹念に追っていく作業となります。これには、今までに収集した資料せんが有効になります。各社から支払った顧問料、報酬の資料を集めて持っていて、これらと売上明細とを照合するわけです。

また、これらの入金は銀行口座に振込か、現金で入金されますので、その入金経路を詳細に調査します。振込先の名前、振込先銀行を把握し、計上漏れの売上はないか、架空口座等からの振り替えはないか、おかしいと思えば更にその振込先の銀行も調査します。

本当は、手帳等で全ての事件を把握したいところですが、先方も法律のプロですから守秘義務、依頼先のプライベートを盾にそのような普遍的な資料はなかなか見せてくれません。

したがって、資料せんとか銀行調査の内容による不一致点を突いていくことになります。

それとこの業界独特の言い回しですが、「着手金」といって業務を依頼した時に手付け金を支払います。このお金はその後戻ってきませんので、支払った時に売上として計上する必要があります。清算金(事件解決の最後にもらうお金)のみを上げて、「着手金」(最低10万円、通常は30万円位)はなかったとするケースも多々あります。

いずれにしても、一年間に扱う事件数は相当の件数に上りますので、その中で金額の僅少なものは計上が漏れるケースがあります。ただ漏れていても法律家のプロとしての誇りからでしょうか、なかなか素直に認めてもらえないことも事実です。

このような時は、押したり引いたりしながら時間を掛けて説得していくことになります。

ただ、お医者さんも同様ですが、自分は一番偉いと思っています(一般の人に比べて特にプライドが高いという意味ですが)のでこの辺を突いていきます。具体的には、個々の売上漏れの裏付けを取って「先生ともあろうお方がこのような明白な事実を曲げられるのはいかがなものでしょうか。」と念を押すわけです。それまでは何を言われても受け流して、実体に迫る証拠を積み重ねるわけです。

最終的な手段としては、「依頼主に直接反面する」ということができますが、それを使ってしまっては感情的な段階に入り事態は最悪になります。つまり、最終兵器を使う前でいかに事態を収拾に向かわせるかが重要です。それを使えるような状態を作ることも同様に重要です。


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